I. 探究学習の重視
総合学習における探究学習は、当校で最も重視し、関心を持って教員全員で検討している。探究学習については、小学校から大学まで各教育機関が取り組み、各種の教育効果が出ているので、当校ではこれらの取り組みから学びながら、探究学習の実行に取り組みたいと考えている。
II. 探究学習の意義と背景
まず、探究学習というと、生徒自身が実生活や実社会などから具体的な課題を見いだし、各教科で学んだことを活用し、多角的な視点から課題にアプローチすることである。その中で教員が関わっていくことになる。従って、教員の関わり方の研究も重要となる。
近年、探究学習が注目されるようになった背景には、第1に、小中学校の全国学力・学習状況調査の分析において、総合学習の時間で探究学習を意識した学習活動に取り組んだ児童生徒ほど各教科の正答率が高かったこと。第2に、国際的な学力調査(PISA)でも高い評価を得たこと。これらが背景にある。
III. 次期学習指導要領の要請
次期学習指導要領を見ると、「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」などの点を重視している。これらの目的を達成するためには、探究学習が適していると考えられる。
また、2020年以降から実施予定の大学入試改革では、従来の知識偏重型の学力観から思考力や判断力、表現力等これまでの入試では図り切れなかった能力が試されることになる。そのためにも探究型の学習は必須だと考えられる。
一方で、探究学習は、その成果に生徒の能力差が大きく反映するなどの問題点も指摘されている。そのため、当校では生徒の能力差の影響を最小限に抑える工夫をしながら、探究学習を積極的に取り入れたいと考えている。
IV. 当校における探究学習に関する具体的な取り組み
1) 西濃地域は、探究テーマの設定にめぐまれている
探究テーマを設定する場合、西濃地域は地域の環境からテーマの発見に恵まれており、テーマの設定には不自由しないと考えられる。その例を列挙してみる。
- 赤坂地区の地層や岩石は研究対象となる。
- 揖斐川など河川と水害との関係も探究テーマとして考えられる。
- 芭蕉に代表される俳句は「奥の細道結びの地記念館」もあり、探究テーマとしてあげられる。
- 地域に伝承する物語、関ヶ原の古戦場など歴史に恵まれている。
- 伊吹山の薬草は、やや専門性の高い探究テーマとして考えられる。
以上のように、西濃地域は探究学習のテーマには事欠かないと思われる。当校ではこの地の利を生かして探究学習を行いたい。
2) 当校における探究学習の目的と実行上の困難生
探究学習に目的として、知識はもとより思考力、判断力、表現力の芽を育てることにあるとされ、その実行においては、話し合いや発表、グループで問題を解き発表する機会を作り、グループワークに取り組み、グループ討議とグループの解決案を議論して発表することが必要であるとされるが、当校に取り入れる場合、この実施過程にはかなりの困難が予想される。
3) 当校における最初の取り組み
当学では、上記の困難性を考慮して、探究学習の実施に向けて入りやすい探究テーマから実行したいと考えている。その例を考えてみる。
- 視聴覚教材の利用
- 最も入りやすい探究テーマとして、視聴覚教材がある。視聴覚教材としては、教科書会社の作成するDVD教材とNHK高校講座が便利である。この教材の中から探究学習のテーマを見つけることは比較的容易でかつ適しているものも少ないと考える。
- 作文の重視
- 当校では、現在表現力を養うため作文練習を重視して、授業後の振り返り学習として50字から80字程度の短文の作文の作成や、恩師などに当てたサンキューレターを書くなど、作文を重視している。この作文は今後も継続する。この作文をテーマとしてあげれば、探究学習の導入ができると考えられる。
4) 探究学習をキャリア教育の中に位置づけ、社会における自分のあり方を考えさせる。ベネッセの「進路サポート」を導入し、キャリア教育の基盤とする。
キャリア教育は、単に進学先や職業選択にとどまらず、社会の中での生き方、自分のあり方を学ぶものと考え、上記の「探究テーマの設定①」を実行していく中で学んでいくことを目指す。これができれば、リアリティのある探究学習が可能となると考えられる。
2019年度は、ベネッセの「進路サポート」を取り入れ、キャリア教育を充実させ、探究学習の中核としたい。地域の課題を知り、その解決策を考えることにより、社会とのつながりを実感し、自分の進路を主体的積極的に考える機会をつくりたい。さらに、地域の問題解決に向ける意欲が、上級学校への進学に向けて具体化してくることを期したい。